ボトルネック奏法は、ギターの演奏テクニックの一つで、スライドバーを使って音程を操作する方法です。元々はブルースの演奏スタイルとして、酒瓶の口の部分を使って演奏していたことから名付けられました。
スライドギターとも呼ばれ、エレキギターが普及してからはロック、カントリー、ポップスなどさまざまなジャンルで使われるようになりました。
この記事では、ギター初心者の方に向けて、ボトルネック奏法の原理や特徴、練習方法、適したスライドバーの種類などを詳しく解説します。
この記事のポイント
ボトルネック奏法の原理・特徴
ボトルネック奏法は、フレットの代わりにスライドバーを使ってネックの表側から音程を操作する演奏方法です。フレットがないため音の境目がなくなり、スムーズに音程を変化させられることが特徴です。
硬い素材であればスライドバーの代用になるため、最初はガラス瓶などを使ってスチールギターを中心にブルースの演奏で用いられていました。
一方、指のようにやわらかい素材で弦を押さえると、スライドした時に弦の振動を吸収してしまい、音がすぐに途切れてしまいます。
ボトルネック奏法の使い方
元々ブルース、カントリーミュージックなどで使われていたボトルネック奏法ですが、演奏に深みが出るため、ロックやポップスのリードギターやギターソロにも取り入れられるようになりました。
たとえば、ジョージ・ハリスンの「My Sweet Lord」は、ロックミュージックにいち早くボトルネック奏法を取り入れた名曲で、冒頭16秒のイントロから聴くことができます。また、独特の音色からメロディ以外にも効果音として使われることもあります。
ボトルネック奏法のやり方
スライドバーは、左手の中指、薬指、小指のいずれかに装着します。最初は薬指に装着すると演奏のコツをつかみやすいでしょう。指を曲げた状態で使用するため、第二関節あたりにはめるのがポイントです。
上のTAB譜は、スライドバーの基本的な練習フレーズです。練習する際は、音程がズレないように正確な左手の移動が大切です。スライドバーが傾いていると、左手が移動しづらくなるので、フレットに対して平行になっているかを確認しながら練習しましょう。
まずはゆっくりとしたテンポで音程を正確に出すことを意識して練習してみてください。
ボトルネック奏法に使うスライドバーの種類
ボトルネック奏法に使うスライドバーには、さまざまな形状や材質のものがあります。自分の演奏スタイルや好みに合ったスライドバーを選ぶことで、より表現の幅を広げることができます。 それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
ライドバーの形状
スライドバーの形状は大きく分けると円筒形、円柱形、それ以外の形に分類できます。
円筒形
円筒形のスライドバーは、指を入れる筒型のタイプで最も一般的な形状です。長さが7cm程度あれば1~6弦まで抑えられるので、初心者にもおすすめです。
また、指板のアールに合わせてくびれのあるタイプは演奏のしやすさが向上します。
円柱形
円柱形のスライドバーは円筒形と同じ形状ですが、指を入れる穴のない構造が特徴です。弾きやすいように取っ手が付いたタイプや、四角い形状のものも存在します。
主にスチールギターなどで使用されますが、エレキギターでも使用可能です。
その他
円筒形や円柱形以外にも、いくつかの形状のスライドバーがあります。たとえば、半円型のスライドバーは、使用する時だけ反転させることができるため、指弾きやピック弾きを併用する際に便利です。
また、指にはめて使う棒状のスライドバーもあります。体積が少ないと、サウンドも軽くなるので、使い勝手や音のバランスに合わせて選ぶと良いでしょう。
スライドバーの材質
スライドバーの材質も形状と同様にさまざまな種類があります。代表的な材質は主に金属、ガラス、その他に分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
金属
金属製のスライドバーは、主にスチール、ブラス(真鍮)、アルミニウムなどが使用されます。中でもスチール製が最も一般的で音の立ち上がりが早く、明るい音色が特徴です。
耐久性も高いので、ライブや練習で頻繁に使用する人におすすめです。
ガラス
ガラス製のスライドバーは金属製と比べて摩擦の抵抗があるため、初心者でも音程をつかみやすいことが特徴です。マイルドな音色でサスティンが短めなので、繊細な表現にも向いています。
ただ、強化ガラスでないものは、落とすと割れてしまう恐れがあるので、取り扱いには注意が必要です。
その他
金属やガラス以外にも、陶器や木製のスライドバーが存在します。これらは、金属やガラスよりも軽量なのでよりソフトでなめらかな表現をするのに適しています。
スライドバーの素材によってギターのサウンドが大きく変化するので、音色のバリエーションを増やしたい時にも役立ちます。
ボトルネック奏法の練習のコツ
ボトルネック奏法を上達させるには、正しい練習方法を身につけることが大切です。ここでは、効果的な練習のコツを3つ紹介します。
ミュートは確実に行う
ボトルネック奏法では、ミュートが非常に重要です。特にエレキギターは、音を歪ませて演奏する機会が多いため、ミュートを行わないと余計なノイズが目立ちやすくなります。
薬指でスライドバーを使用する際は、人差し指や中指を弦に軽く触れてミュートをしましょう。また、弦を押さえていない手も弦に軽く触れてミュートすることで、ノイズの発生を抑えられます。
弦高を高めにセッティングする
ボトルネック奏法では、弦高が低いとスライドバーを弦に乗せた時にフレットに当たり、ノイズが発生しやすくなります。
そのため、演奏中に弦とフレットが接触しないよう、弦高を高めにセッティングすることがおすすめです。ほかにもアルミ製やガラス製など、軽量なスライドバーを使用すると、弦高が低いままでも弾きやすくなります。
他のオープンチューニングを試してみる
ボトルネック奏法は、レギュラーチューニングでも演奏可能ですが、オープンGやオープンE、オープンDなどのチューニングを試して見ることも方法です。
これらのチューニングは、ブルースやハワイアンミュージックのような響きを出しやすく演奏の幅が広がります。同じポジションでも、チューニングによって音程や雰囲気が変わるので、演奏のバリエーションを増やしたい人は試してみましょう。
ボトルネック奏法に関するよくある質問
ここでは、ボトルネック奏法に関するよくある質問とその回答を紹介します。自分の疑問や悩みに当てはまる内容があれば参考にしてみてください。
スライドバーは瓶などで代用できる?
ボトルネック奏法は、元々酒瓶を用いた演奏方法なので、瓶などでも代用は可能です。実際に、ガラス瓶やソケットレンチを使って演奏するプロのギタリストもいます。
しかし、本格的な演奏を目指すなら、専用のスライドバーを使うことをおすすめします。
ボトルネック奏法はアコギでも演奏できる?
ボトルネック奏法はスチール弦のギターであれば、アコースティックギターでも演奏可能です。
基本的な弾き方は、エレキギターと同じなので、今回紹介した内容を参考に練習してみてください。
ただし、クラシックギターのようにナイロン弦を使用するギターは、音量が出にくく、ボトルネック奏法には適していません。
まとめ
ボトルネック奏法は、スライドバーを使ってギターの音程を操作する演奏テクニックです。ブルースやカントリーミュージックで発展し、現在ではさまざまなジャンルで使われています。
独特の音色とスムーズな音程変化が特徴で、演奏に深みを与えてくれます。練習する際はスライドバーの正しい持ち方、ミュートの重要性、弦高のセッティングなどに注意しましょう。
また、スライドバーの形状や材質によって音色が変わるので、自分の演奏スタイルに合ったスライドバー選びも大切です。
コツをつかめば表現力豊かな演奏ができるため、気になる人は練習を重ねて、自分らしい表現でギターを弾いてみましょう。