MarshallのJCM900といえば全国各地のリハスタ、ライブハウスに設置されているアンプ。ギタリストであれば誰もが一度は使ったことのあることでしょう。ロックの歴史で欠かすことのできない名アンプですが、その魅力はどこにあるのでしょうか。
ぜひMarshall・JCM900の音作りの参考にしてください。
この記事のポイント
JCM900とは?
JCM900は身近なアンプですが、誕生の歴史やスペックを知らずに使っているギタリストも多いことでしょう。JCM900にまつわる歴史、種類、セッティング例などをご紹介いたします。
Marshall・JCM900の歴史的背景やセッティングを理解することでJCM900の音作りがより楽しくなるでしょう。
JCM900の歴史
Marshall・JCM900の歴史はギターサウンドの歪みの歴史と言ってよいでしょう。
JCM900とはどのような経緯を持って誕生したのでしょうか。その誕生のきっかけは音楽シーンの流れが大きく影響しています。
改造Marshallが人気に
ロックのギターサウンドを牽引しているMarshall。特に80年代は多くのギタリストがJCM800を使用していました。しかし時代はハードロックからヘヴィメタルに以降しつつあり、1980年代後半になるとJCM800の歪みでは物足りないと感じるギタリストが増えていたのです。
1981年に誕生したJCM800ですが、現在もザック・ワイルドなど世界のトップギタリストが愛用しています。
多くのメタルギタリストはハイゲインを求めて改造を施したJCM800を使用していました。この改造を手掛けていたのがラインホルト・ボグナーやマイク・ソルダーノです。 ラインホルト・ボグナーはエクスタシーなどで知られるボグナーを立ち上げ、マイク・ソルダーノはSLO-1で知られるソルダーノを立ち上げました。
ボグナーのウーバーシャルは、改造Marshallのサウンドを再現したアンプですね。
JCM900の誕生
改造Marshallはたちまちギタリストの間で評判となり、多くのギタリストがJCM800の改造をするようになりました。
しかしラインホルト・ボグナーやマイク・ソルダーノのような、優秀なアンプビルダーはごくわずか。専門的な知識を持たずに改造されたJCM800の中には、逆に音質が劣化するケースもあったのです。
専門知識を持たずに改造する人が多い状況を知ったMarshallは、より歪むアンプの制作に乗り出しました。これが後のJCM900です。JCM900は1990年に正式に販売され、そのハイゲインサウンドは多くのギタリストを夢中にしました。
1990年はMETALLICAがグラミー賞を受賞し、ギターサウンドが大きく変化した時代でもありました。JCM900はハイゲインアンプの時代に誕生し、その後のアンプにも大きな影響を与えたのです。
JCM900のスペック
アマチュアからプロまで多くのギタリストが使用するJCM900ですが、そのスペックはどうなっているのでしょうか。モデルごとの特徴や真空管をご紹介します。
3種類のJCM900
ハイゲインサウンドでギター界に大きな衝撃を与えたJCM900。現在も多くのギタリストから愛されているアンプですが、実は3種類のモデルがあります。こちらではそれぞれの特徴を解説しましょう。
High Gain Dual Reverb
リハスタやライブハウスでおなじみのJCM900ですが、その大半はHigh Gain Dual Reverbでしょう。このモデルはクリーン・チャンネルとドライブ・チャンネルの、2チャンネル仕様になっています。
JCM900はそれぞれのチャンネルのイコライザーは共通していますが、チャンネルごとにマスターボリュームとリヴァーブの設定ができます。そしてフットスイッチによってチャンネルの切り替えも可能。そのためライブでも使い勝手のよいアンプでしょう。
リハスタやライブハウスはフットスイッチが無いことも多いので、切り替えたい場合は自分で用意しておきましょう。
High Gain Master Volume
High Gain Dual Reverbは2チャンネル仕様でしたが、High Gain Master Volumeは1チャンネル仕様。そして2段階でゲインの調整が可能となっていますので、より強力なドライブサウンドを作り出すことができます。
High Gain Master Volumeは1チャンネルではあるものの、2種類のマスターボリュームを設定することができます。フットスイッチで切り替えられるので、ライブ中のソロでブーストすることが可能。今でこそマスターボリュームを変えられるアンプは一般的ですが、その当時では非常に新しい仕様でした。
High Gain Master Volumeでクリーンとドライブを切り替える場合はどうしたらよいのでしょうか。これはゲインノブを下げるしか方法はありません。そのため歪み専門アンプと言えます。
ギターのボリュームを下げてクランチを作るという方法もありますね。
SL-X
1990年に誕生したJCM900はハイゲインとして知られていますが、1991年にはピーヴィーの5150とメサ・ブギーのレクチファイアが発表されました。5150やレクチファイアはJCM900以上の歪み量を持っており、現在でもハイゲインアンプの代名詞として知られています。そのためMarshallとしてもこれらに負けないハイゲインアンプを作る必要があったのです。
1993年に誕生したのがJCM900 SL-Xです。このモデルはHigh Gain Master Volumeのプリ管を1本増やして3本から4本にし、よりハイゲインになっています。このころからギターアンプのハイゲイン競争が始まったと言えるでしょう。
Peavey・5150のスペックやセッティングを徹底レビュー
2種類のパワー管
オールチューブのアンプはプリ管とパワー管が入っており、Marshallのパワー管は伝統的にEL34が使われています。これはJCM900も同様のことです。しかし1993年ごろからEL34の供給が不安定になってしまい、代わりに5881というパワー管が使われるようになりました。
5881はメサ・ブギーなどアメリカのアンプメーカーが使用しているため、5881=アメリカンというイメージがありました。しかしMarshallはイギリスのアンプメーカー。そのため違和感を覚えるギタリストも多かったのです。
さらにこの時期はギターサウンドのハイゲイン化が進んでいたこともあり、「Marshallは変わってしまった」と嘆くギタリストもいました。 そして1998年からEL34の供給が安定するようになり、パワー管は5881からEL34に戻されています。
5881はキメ細かい歪みが特徴で、決して悪い真空管ではありませんよ。メサ・ブギーのサウンドの決め手は5881です。
JCM900の終焉と復活
世界的に人気のアンプとなったJCM900。しかし1997年になると、よりハイゲインで使い勝手の良いJCM2000が発売されました。
JCM2000の登場によってJCM900は過去のアンプになってしまい、2008年になるとついに生産が終了してしまいます。
JCM900には根強いファンがおり、再発を望む声も多かったのです。そのため2017年にヴィンテージ・リイシュー・モデルとして再発されました。JCM900のドライブサウンドは現代の音楽シーンでも求められているのです。
現行のJCM900は2チャンネル仕様のHigh Gain Dual Reverbで、パワー管には5881が採用されています。
JCM900のセッティング
多くのギタリストがお世話になっているMarshall・JCM900。僕もその1人ですが、約10年ぶりに使ってみました。僕なりにクリーン、クランチ、ハイゲインのセッティングをしてみたので、参考にしてもらえると嬉しいです。
JCM900のセッティングについて、今回はツー・ハムバッカーのギターを使用しました。
クリーンのセッティング
JCM900は歪ませるイメージがありますが、クリーンもしっかりと使えるサウンドです。
まずはJCM900をクリーン・チャンネルにして、GAINを9時にしてVOLUMEを3時にしてください。GAINはこれくらいが最もパリッと引き締まりますね。
ハイが出やすいのでTREBLEは12時、PRESENCEは9時にします。シングルコイルでしたらもう少し下げても良いでしょう。澄み切ったクリーンにするためMIDDLEは9時、このままでは若干パワー不足なのでBASSは12時半くらいで。REVERBは11時です。
このセッティングでしたらリアのアルペジオ、ハーフトーンのカッティングが気持ちいいですよ。フロントの甘いリードサウンドも魅力的です。リードプレイ中心でしたらもう少しREVERBを上げても良いでしょう。
クランチのセッティング
クランチあたりからJCM900の魅力が出ますね。JCM900はクリーン・チャンネルにしてGAINを3時、VOLUMEを2時にしましょう。これ以上歪ませると音が攻撃的になってしまいます。
ハイがキツくならないようにTREBLEを11時、PRESENCEを10時にしてください。 ジャキジャキ感を出すためにMIDDLEは抑えめで10時、適度な太さをだすためにBASSは2時にしました。
このセッティングはカッティングやコードストロークに向いていますよ。音に粘り気もありますので、ブルース系のソロにも合うでしょう。ピッキングの角度や強弱で大きく音が変化するので、イコライザー意外の部分も研究してください。
Marshall・JCM900と組み合わてテレキャスが弾きたくなるセッティングなんですよ。ギャンギャンしたガレージロックのようなサウンドですね!
ハイゲインのセッティング
JCM900といえばハイゲイン。とにかく凶暴でザクザクとしたサウンドを目指しました。
JCM900をドライブ・チャンネルにセッティングし、LEAD GAINは3時、VOLUMEは11時にしましょう。もっと歪ませたくなりますが、本当にザクザクさせるのであればこの程度で抑えるべき。ピッキングスピードで歪ませる気持ちで弾いてください。
TREBLEとPRESENCEは11時半。ハイをこれくらいにしておくと、ピックが弦にヒットするノイズが心地良いんです。MIDDLEを4時まで上げると太くマッチョなサウンドになります。BASSは思い切ってマックスまで上げました。太さというよりウーハーのような意味があります。
またジェントやメタルコアを演奏するのであれば、チューブスクリーマーなどのオーバードライブでブーストしましょう。オーバードライブはLEVELマックス、GAINはゼロ、TONEはお好みで。
JCM900の感想
ドライブ・チャンネルのザクザク感はさすがですね。「これぞJCM900!」と言いたくなるサウンド。でもこれだけ歪んでおきながら、しっかりとピッキングのニュアンスが出るんですよ。
だからJCM900で良い歪みを出すギタリストは音作りの上手さではなく、ピッキングの上手いんだと思います。アンプだけで歪ませるのではなく、自力で歪ませる部分があるんですよ。これはギタリストの腕の見せどころですね。
JCM900のセッティングはマニュアル車の運転の面白さに似てると思います。
クリーン・チャンネルはパワーがあり、GAINを上げるとオーバードライブくらいに歪みます。クランチが最高なんですけどね。
改めてJCM900と向き合ってもらいたいのですが、リハスタやライブハウスは要注意。メンテナンスが不十分だったり、真空管がヘタっていたり、個体差が激しいんです。同じセッティングでも思ったようなサウンドにならないこともあるので、それを踏まえて音作りをしましょう。
またプリアンプや最近人気のKemperなどを使っているのであれば、リターンに挿しても良いですね。これであればジェントやメタルコアなど、新しいサウンドにも十分に対応できます。
Marshall・JCM900の買取は楽器の買取屋さんへ
Marshall・JCM900の売却をお考えでしたら高額査定の楽器の買取屋さんへお問い合わせください。
たとえば、JCM900・Model2100を46,800円で買取した実績もあります。
その他さまざまなMarshallのアンプの買取事例は以下のページをご参照ください。
Marshallのアンプの買取価格は?JCMシリーズや小型モデルの買取相場表