アーミングとは、その名のとおりギターに装着されたアームを用いて音程を変えて演奏するテクニックです。トレモロやビブラートと呼ばれることもあり、ロックミュージシャンを中心にアーミングの名手は多く存在します。
たとえばスティーブ・ヴァイはアーミングを駆使した演奏が有名で、代表曲の「For the Love of God」では、1分48秒からアーミングを使った抑揚のあるプレーを聴くことができます。
アーミングをマスターすることで自由に音程を変化させることができるため、ギターのプレーの幅がより広がります。アーミングを練習する前に、どんな種類があるのか見ていきましょう。
この記事のポイント
ギターのアーミングの種類
アーミングには主に下記の3つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
- ビグスビータイプ
- シンクロナイズドタイプ
- フロイドローズタイプ
ここでは、それぞれの種類と特徴を紹介します。
ビグスビータイプ
ビグスビータイプは、フェンダーやギブソンなどさまざまなメーカーのギターに対応したアームです。ボディの加工もほとんど必要ないため、セミアコギターやレスポールタイプなどにも搭載できるという特徴があります。
テールピースだけが稼働する仕組みなので、音の可変域は狭いものの、ビブラートなど基本的な演奏には対応しています。アームのついていないギターでアーミングをするのであれば、ビグスビーを後付けする方法が一般的です。
初心者の方や、既存のギターにアームを追加したい方にもおすすめのタイプです。
シンクロナイズドタイプ
シンクロナイズドタイプは、ストラトキャスタータイプのギターに搭載されているアームで、最も普及しているタイプです。ブリッジごとアームで動かす大胆な構造を採用しており、音域を変化させる範囲が広いことも特徴です。
いわゆるボディをブリッジにくっつける「ベタ付け」など、スプリングの強弱によって調整できる範囲が広く、派生された機構も多くあります。
ストラトタイプのギターなら基本的に搭載されているので、手軽にチャレンジしやすいこともポイントです。
そのため、幅広い音域の変化を求める方やストラトキャスタータイプのギターを使用している方におすすめです。
フロイドローズタイプ
フロイドローズタイプは、シンクロナイズドタイプを参考にした比較的新しいアームです。チューニングが乱れにくく、さらに音の可変域が広いことが特徴です。
ギターの弦をブリッジとナットで固定することから、ロックタイプと呼ばれることもあります。
ボディにザグりと呼ばれるくぼみを施すことで、より自由なアーミングがプレーしやすくなっています。一方でチューニングの難易度が高く、後付けしづらいといった注意点もあります。
高度なアーミングテクニックを駆使したい上級者や、チューニングの安定性を重視する方に適しています。
ギターのアーミングのテクニック
アーミングを使った演奏方法は複数あります。ここではアーミングの代表的なテクニックを紹介します。
ビブラート
ビブラートは、アームを小刻みに動かして揺れたような音程を出すテクニックです。ピッキングと同時にアームを動かす奏法をクリケット奏法と呼ぶこともあります。
アームを動かすときは一定のスピードや音程幅で動かすことで、きれいにビブラートがかかります。音を伸ばすときに効果的に聴かせる際に用いられる場合もあります。表現力豊かな演奏を目指すなら、まずはビブラートテクニックの習得がおすすめです。
アームアップ
アームアップは、演奏中にアームを引っ張り上げることで、音程を高くするテクニックです。アーミングでよくイメージされる「ギュイーン」といったサウンドはアームアップによるものです。
後述するアームダウンと組み合わせて広い音程幅で演奏されることもあります。セッティングやアーミングユニットの種類によってどれだけ音程が上がるのか異なることも特徴です。
ダイナミックな音の変化を求める方や、ソロ演奏でインパクトを与えたい方におすすめのテクニックです。
アームダウン
アームダウンは、アームをネック側に倒すことで弦を緩めて元の音程を低くするテクニックです。音を下げる演奏方法はチョーキングでもできないため、アーミングならではの奏法といえます。
一方、アームアップと比べて多用しているとチューニングがズレてしまう可能性があります。その場合は比較的チューニングが狂いにくいフロイトローズを使うか、ナットグリスなどで抵抗を減らすといった方法がおすすめです。
低音の効果を求める方や、ユニークな演奏表現を追求する方に適したテクニックです。
ギターのアーミングの練習方法
まずは全音符で音を出し、アーミングで音程に変化をつける練習から始めましょう。
2,3,4拍目でアームアップやアームダウンを行うと、規則的に音程の変化をつける練習になります。
ピッキングした後にアームを持つ際は、薬指と小指で握るようにすると力を入れやすくなります。音を戻すときは力を緩めるとナチュラルに音程が戻せて負担もかかりにくいです。
慣れてきたら8分音符で変化させる練習やビブラートをかける練習にもチャレンジしてみましょう。段階的に難易度を上げていくことで、着実にアーミングのスキルを向上できます。
ギターのアーミングに関するよくある質問
ここでは、アーミングに関するよくある質問とその回答を紹介します。チョーキングとの違いやアームの搭載方法など、初心者が気になる内容をまとめました。
アーミングとチョーキングの違いは?
チョーキングはアーミングと同じように音程を変化させるテクニックです。ただし、アーミングが音程を上げたり下げたりできることに対して、チョーキングは音程を上げることしかできません。
また直接指で弦を押し上げて音程を変えるチョーキングに対して、アーミングはアームを使って弦の音程を変えることから、全ての弦の音程が変化することも特徴です。
アーミングはより幅広い音程の変化が可能で、全弦に影響を与えるため、ダイナミックな演奏効果を生み出せます。
アームの付け方は?
レスポールやセミアコギターなど元々アームが付いていないギターに取り付けるのであれば、ビグスビーが一般的です。
元のテールピースと交換するだけで取り付けられるため、ギターの取り扱いが不慣れな初心者でも装着しやすいでしょう。
一方、シンクロタイプのアームを付けたいのであれば、ボディに穴あけ加工が必要になります。自分でアームを取り付けることが不安なら専門店に相談しましょう。
アーミングの名手にはどんなプレイヤーがいる?
アーミングはロックを中心にさまざまな音楽で用いられている奏法で、得意とするプレーヤーも多くいます。
たとえば、ジェフ・ベックやジミ・ヘンドリックスはアーミングギターのテクニックにも優れた60年代を代表する名ギタリストです。
またエドワード・ヴァン・ヘイレンも70年代後半から80年代に活躍したアーミングギターの名手で、フロイドローズタイプを使ったアーミングによる名演が多く残されています。
ほかにもピンクフロイドのデヴィッド・ギルモアをはじめ、さまざまなジャンルでギターのアーミング奏法が用いられています。
これらの名手の演奏を参考にすることで、アーミングの可能性をより深く理解できるでしょう。
まとめ
アーミングを習得することで、ギターの表現力を大きく広げられます。基本的なテクニックとしては、ビブラート、アームアップ、アームダウンがあり、これらを組み合わせることで豊かな表現が可能です。
まずは全音符で音程変化をつける練習から始め、徐々に複雑なフレーズに挑戦していきましょう。
また、多くの名ギタリストがアーミングを駆使して素晴らしい演奏を残しています。彼らの演奏を参考にしながら、自分なりのアーミング奏法を見つけていくことで、ギター演奏の新たな可能性が広げられます。
アーミングの習得には時間と練習が必要ですが、より表現豊かな音楽を生み出すことにつながります。ぜひ、この記事で紹介した方法を参考に、アーミングの練習に取り組んでみてください。