世界のアンプのスタンダードといえばMarshall。これまでにいくつもの名アンプを作り上げたMarshallですが、現在のフラッグシップモデルといえばJVMです。透明感のあるクリスタル・クリーンから地響きのようなハイゲインまでカバーし、世界中のギタリストを虜にしています。
Marshall・JVMの魅力をご紹介しましょう。
この記事のポイント
JVMとは?
スタジオやライブハウスでもMarshallのJCM900やローランドのJC120と並んで、JVMを目にする機会も増えました。
JVMとはどういったアンプなのでしょうか。JVMの歴史、スペック、セッティングなどをご紹介します。
JVMの歴史
2007年にMarshallから発売されたJVMですが、どのような歴史を持っているのでしょうか。
JVMが誕生した背景を知ることで、よりJVMが理解できます。
JCM2000以上のハイゲイン
ロックの歴史において、「ギターアンプ=Marshall」という考えは定説でした。しかし音楽シーンの変化によって、より激しい歪みと低音が求められるようになったのです。
MarshallのハイゲインアンプといえばJCM2000で、多くのギタリストが使用していました。しかしMarshallは「JCM2000を超える、今までで最も激しい歪み」をコンセプトに掲げて新たなアンプの開発を進めたのです。JVMはそういった経緯で誕生し、Marshallの歴史上最も歪むアンプとなりました。
またJVMという名前はMarshall創業者のジム・Marshallの“J”、ジムの娘であるヴィクトリア・Marshallの“V”に由来しています。
MarshallのJCM2000も名アンプですね!DSLと名前を変えて現在も販売されています。
7弦ギターの登場とMarshall
JVMが発売された2007年の音楽シーンは、ハイゲインサウンドが当たり前となりました。
2000年代はKoЯnのように7弦ギターを使用するバンドも急増。7弦ギターはより低い音域をカバーできますが、そういった音域に対応できるハイゲインアンプは限られていました。
代表的なアンプはピーヴィーの5150、メサ・ブギーのレクチファイアでしょう。これらのアンプは90年代に登場しましたが、豊かなローと圧倒的な歪みによってジェントやメタルコアの7弦ギタリストから使用されていました。そこにMarshallのJVMが加わり、多くのギタリストがJVMに乗り換えています。
5150、レクチファイアのどちらも未だに根強い人気があります。
Peavey・5150のスペックやセッティングを徹底レビュー
マルチチャンネル
2007年当時はハイゲインというだけでなく、ヒュース&ケトナーのトライアンプMK2のようなマルチチャンネルも当たり前となっていました。
Marshall・JVMは史上最高のハイゲインアンプを目指すだけでなく、マルチチャンネルにもこだわっています。
JVMはクリーン、クランチ、OD1、OD2の4チャンネル仕様となっており、もちろんイコライザーも独立しています。さらにそれぞれのチャンネルにはグリーン、オレンジ、レッドの3モードがありますので、1台のアンプで12種類のサウンドに対応。しかも2種類のマスターボリュームが設定できるので、バッキングとソロで音量を変えることもできます。
またJVMはMIDIにも対応しているので、MIDIペダルを仕様することで128通りの音色を呼び出すことが可能。まさにギタリストの全ニーズに応えるアンプと言えるでしょう。
MIDIは少し難しいイメージがありますが、複数の音色を使い分けるのであれば強力なツールとなります。
JVMの真空管
JVMはオールチューブアンプで、プリ管にECC83を5本、パワー管にEL34を4本搭載しています。
この真空管の組み合わせは古くかMarshallで採用されており、アンプのひとつのスタンダード。特にパワー管のEL34はMarshallサウンドの肝となっており、EL34を紹介する際は“Marshall風のサウンド”と表現されています。
逆にメサ・ブギーの多くはパワー管に6L6を仕様しています。真空管によってアンプのキャラクターは大きく変化するんですよ!
JVMのチャンネル紹介
JVMはクリーン、クランチ、OD1、OD2の独立4チャンネル仕様。
さらにそれぞれのチャンネルにはグリーン、オレンジ、レッドの3モードがあるので、多彩なジャンルに対応しています。
チャンネルに応じたMarshall・JVMのセッティングを紹介します。
クリーン・チャンネル
Marshallアンプはハイゲインのイメージがありますが、そのようなことはありません。特にJVMのクリーン・チャンネルは多くのギタリストに知っていただきたい魅力があります。
グリーン
JVMで最もクリーンなサウンドが出せるモードです。非常に澄み切ったクリスタル・クリーンですので、普段はフェンダーなどのアンプを使用しているギタリストにも使ってもらいたい音ですね。
どこまでもピュアなクリーンは本当にオススメ!“JVMは歪みだけでしょ?”と考えるギタリストも要チェックです。
オレンジ
クリーン・チャンネルでありながら、オレンジモードではゲインを上げることでナチュラルなオーバードライブサウンドになります。クラシックなオーバードライブサウンドですので、ピッキングの強弱によってサウンドを表現しましょう。
レッド
レッドにすることでさらに歪みが増し、伝統的なMarshallのサウンドが出せます。クラシック・ロックやブルースでのリードプレイに最適でしょう。
クランチ・チャンネル
JVNのクランチ・チャンネルは古くからMarshallで採用されている、ゲイン→トーンの順番の回路です。
JCM800などのMarshallアンプに慣れているギタリストにおすすめします。
グリーン
クラシックなMarshallのオーバードライブサウンドで、1959など少し枯れたトーンを求めるギタリストに向いています。
オレンジ
70年代80年代のロック、ハードロックをプレイするのであれば、このモードがおすすめ。歪んでいながらも、ジャキジャキとしたコード感が残されたトーンです。
個人的にクランチ・チャンネルのオレンジ・トーンがお気に入りです。無骨で汗臭いペンタ系のソロがよく似合うトーンですよ!
レッド
レッドモードはJCM800をフルドライブしたサウンドです。ピッキングの強弱がそのまま表現されるトーンなので、ギタリストの癖が表に出るモードでしょう。
OD1・チャンネル
Marshall流のハイゲインサウンドを楽しむならOD・1チャンネルがおすすめです。
JCM900やJCM2000に慣れたギタリストであれば、馴染み深いサウンドでしょう。
グリーン
JCM800~JCM900の歪みに似たサウンドです。ハードロックはもちろんのこと、パワーコード主体のエネルギッシュなパンク・ロックにも向いています。
オレンジ
80年代メタルのバッキングを目指すのであればオレンジモードです。ディストーションサウンドではありますが、ピッキングの強弱によって歪み量が変化します。これを利用することで、よりリフをスピーディーに聴かせられるでしょう。
メタルリフのスピード感って最終的に右手で決まると思っています。
レッド
90年代以降のモダンなヘヴィメタルのバッキング向けサウンドがレッドモード。ザクザクとした刻みが出せます。チューブスクリーマーなどのエフェクターでブーストすることで、ジェントやメタルコアにも十分対応可能です。
OD2・チャンネル
JVM独自のハイゲインを堪能するならOD2・チャンネルです。6弦ギターはもちろんのこと、7弦ギターや8弦ギターのポテンシャルを最大限まで引き出すことができます。
グリーン
これまでのMarshallサウンドより重心が下がっているため、7弦ギターや8弦ギターでローを出すのであればグリーンモードです。
オレンジ
攻撃的なギターソロやロングサスティーンでたっぷりと泣かせるならオレンジモード。テクニカルなギタリストにもおすすめです。
レッド
タッピングやスウィープを綺麗に表現するには十分な歪みが必要ですが、レッドモードであれば心配ありません。JVM最大の歪み量を持つモードです。
JVMのセッティング
僕が実際にJVMを使って、クリーン、クランチ、ハイゲイン・バッキング、ハイゲイン・リードを作ってみました。今回は少し出力が高めのツー・ハムバッカーのギターを使用しました。
僕なりにがんばってMarshall・JVMのセッティングを考えてみたので、参考にしてもらえると嬉しいです!
クリーン・トーン
まずはJVMで澄み切ったクリーン・トーンを目指しました。
クリーン・チャンネルのグリーン・モードです。 GAINは10時~11時にしてください。これによってサウンド全体にハリが生まれます。BASSは12時、MIDDLEは10時にしてシャープなサウンドを目指しましょう。これより上げてしまうと太くなるんですよね。
ハムバッカーなのでTREBLEは1時にして、ややハイを強めに。シングルのピックアップでしたら少し抑え気味の方がいいですね。
澄み切ったクリーンで、アルペジオだけでなく1、2弦を使ったカッティングにもピッタリです。
クランチ
ジャッキジャキのクランチを出すならクランチ・チャンネルのオレンジ・モードですね。
GAINは12時くらいで適度なオーバードライブサウンドになります。 パワーがあり過ぎてもマズイのでBASSは12時。MIDDLEを1時にすることで音が少し前に出てくるので、サウンドにロック感が出ます。
そしてTREBLEを2時まで上げることで、オタマジャクシの1つ1つがはっきりと聴こえるようになるんです。
テレキャスを繋ぎたくなるサウンド。コードストローク主体のギターロックにピッタリだと思います。
ハイゲイン・バッキング
ヘヴィメタルのバッキングはOD1・チャンネルのレッド・モードがおすすめです。
GAINは10時にしました。これ以上歪ませてもいいんですが、ピッキングのニュアンスが出にくくなるんです。それを考えると10時くらいで十分ですね。 BASSとTREBLEは12時にして、MIDDLEを3時くらいまで上げました。
ヘヴィメタルのバッキングはドンシャリのイメージありますけど、MIDDLEを上げたムチムチ感が必須だと思います。これによって音がマッチョになるんですよね。
とにかくザクッ、ズンッ、という腹に響くサウンドを目指しました。JVMはノイズが少ないので刻みがタイトに聴こえますね!
ハイゲイン・リード
ハイゲイン・リードでしたらJVMで最も歪む、OD2・チャンネルのレッド・モードですね。
GAINは11時~12時。これ以上は音が暴れてしまいます。適度にニュアンスを出すためにBASSは12時。下げるとパワーが不足しますし、上げ過ぎるとニュアンスが出しにくくなります。
バンド内で抜ける音にするため、MIDDLEは15時~16時にしましょう。そしてピッキングノイズを抑えるためにTREBLEは9時にしました。
ごまかしが効くセッティングでもあるので、3割増しで上手くなった気分になります(笑)。これに慣れると危険なので、練習だったら少しGAINを下げた方がいいですね。
JVMの感想
はっきり言ってJVMクラスのアンプは、適当にセッティングするだけである程度使える音になります。
ようするに、使えない音を作る方が難しいアンプなんです。さすがMarshallのフラッグシップモデル。 そしてハイゲインの部分が注目されがちですが、JVMはそれだけのアンプではありません。クリーンやクランチもフェンダーに負けないレベル。
Marshall・JVMはとにかくチャンネルやモードの多いアンプなので、じっくりと時間をかけて音作りを楽しんでください。
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