ジャズマスターは、Fender(フェンダー)およびSquier(スクワイヤー)から登場しているエレキギターです。 サーフ・ロック、ガレージ・ロック、オルタナティブ・ロックなどのプレイヤーに愛されています。
ジャズマスターの魅力を一挙紹介します。
この記事のポイント
フェンダー・ジャズマスターとは
ジャズマスターは、Fender創業者のレオ・フェンダーが「打倒レスポール」を掲げて開発したジャズ用のエレキギター。ジャズギタリスト向けのギターらしく甘めなサウンドが特徴です。
本来ジャズ向けに作られたジャズマスターは意外な歴史をたどりますが、今ではさまざまなジャンルのギタリストに愛されています。
フェンダーとジャズマスターの歴史
Fender社がエレキギターの世界に本格参入した1950年代、ジャズの分野でストラトキャスターやテレキャスターを使うプレイヤーはいませんでした。ジャズギタリストの多くは、Gibson・レスポールの甘い音色を求めていたからです。
流線型のボディデザイン
ジャズマスターは左右非対称のボディシェイプが特徴。ジャズギタリストが演奏することを想定し、座っても弾きやすいオフセットウェストとしました。 当時のGibson系ギターは官能的な流線型のデザインが主流。ジャズマスターはフェンダーらしさを残しながら、同時にふくよかな膨らみのデザインです。
ジャズマスター愛用者ですが、テレキャスターやストラトキャスター用のソフトケースにはギターが入りません。ベース用のギグバックを購入することをおすすめします。
ローズウッド指板のロングスケールネック
実は、Fenderで初めてローズウッド指板を採用したのがジャズマスターです。 ローズウッドは温かみや粘り気がある音色になりやすく、Gibsonのギターにも採用されていました。
「打倒レスポール」を掲げるジャズマスターがローズウッド指板を使うのは当然と言えます。 また、ジャズマスターはロングスケール(324mm)の21フレットネックです。Fenderのスタンダードなスケールを採用しています。
なお、ジャズマスターはジャズギタリストから不評でした。その理由は、指板のアールがきつくコードストローク向きで、リードギター(単音ギター)中心のジャズギタリストとの相性が悪かったからです。
コードストローク向きのジャズマスターが、のちにオルタナティブ・ロックやシューゲイザーで活躍するのは納得です。
フローティング・トレモロ
ジャズマスターはフローティング・トレモロユニットを採用しました。 従来のストラトキャスターのシンクロナイズド・トレモロユニットと比べて、より滑らかで自然なピッチのビブラートを実現します。言いかえると、フローティング・トレモロは音程の上下幅が狭いです。 フローティング・トレモロは、アーミング時にチューニングが狂いにくく、ビグスビータイプのようなビブラートができるトレモロユニットを目指しました。ストラトキャスターのシンクロナイズド・トレモロの極端な音の動きは不評だったからです。
ジミ・ヘンドリックスの登場まで、ストラトキャスターのトレモロは失敗作というイメージを持たれていました。フローティング・トレモロは、レオ・フェンダーが早急に解決したい課題だったと言えます。
イモネジブリッジ
評判が悪いジャズマスターのブリッジの中でも特に不評なのがイモネジです。 ジャズマスターのイモネジは演奏中に勝手に飛んでいきます。
ジャズマスター愛用者ですが、ライブ中にイモネジが紛失して困ったことが何度もあります。
ジャズマスターのイモネジが紛失しやすい理由は、弦のテンションが弱いためイモネジを固定できていないからと言われています。 これは、開発当時の1960年頃と比べて近年のエレキギターの弦が細くなったからです。 イモネジのテンションの緩さはジャズマスターの独特なサウンドを作るポイントです。ただし、実用性を考えながら改造するかしないか考えましょう。
年代ごとのジャズマスターの違い
ジャズマスターの年代ごとの違いを表にしました。
年式 |
特徴 |
1958年 |
アノダイズド・ピックガード |
1959~1962年 |
べっ甲ピックガード・セミラージヘッド・スラブボード |
1962~1965年 |
セミラージヘッド・ラウンドボード |
1964年 |
トラロゴ・グレイボビンピックアップ |
1965年 |
ラージヘッド・バインディングドット |
1966年 |
ラージヘッド・バインディングブロック |
1968年 |
CBSロゴ |
ジャズマスターの変遷を一部抜粋しながら紹介します。
アノダイズド・ピックガードの最初期モデル
1958年製のジャズマスターは、アノダイズド・ピックガードを採用していました。 アノダイズド・ピックガードは、ゴールドの高級感ある見た目かつ、ノイズ対策やトレブルが弱くなる点が特徴です。しかし、ピッキング時に塗装がすぐ剥がれてしまうため、すぐにべっ甲のピックガードへ移行しました。
ラウンドローズ指板の1962年モデル
1962年頃からジャズマスターに導入されたラウンドローズ指板は、ネックが反りにくいことが特徴です。ラウンドボードは少しタイトな響きで、スラブボード期のジャズマスターが目指した音の太さからは離れています。
ラージヘッド・バインディングブロックの1966年モデル
ストラトキャスターを踏襲したラージヘッドに加えて、ポジションマークはブロックタイプに変更されました。バインディング・ブロックのジャズマスターと呼ばれますが、明らかにGibsonを意識した仕様です。
1968年にCBSロゴ(モダンロゴ)に変更されて以降、大きな仕様変更はありません。
兄弟機・ジャガーとの違い
ジャズマスターの兄弟機・ジャガーとの違いを表にして比較しました。
|
ジャズマスター |
ジャガー |
ボディ |
オフセットウェスト |
オフセットウェスト |
トレモロ |
フローティング・トレモロ |
フローティング・トレモロ |
スケール |
ロングスケール |
ショートスケール |
ピックアップ |
ワイルドコイルピックアップ |
シングルコイル・ピックアップ |
ピックアップセレクター |
トグルスイッチ・プリセットスイッチ |
スライドスイッチを採用 |
実は、ジャガーはジャズマスターの上位互換(最上位機種)として開発されました。どちらも似たような見た目のギターです。
しかし、ジャガー・ジャズマスターともに1970年代に不人気機種となりラインナップから外れます。どちらも1990年代には再度カタログにラインナップされ、今では人気モデルとして多くのファンがいます。
ジャズマスターが甘いサウンドなのに対し、ジャガーはエッジが効いた鋭いサウンドです。遠目から見たボディシェイプは似ていますが、実は大きな違いがあります。
ジャズマスターを愛用するギタリスト
ジャズでは不評だったジャズマスターですが、数多のギタリストが愛用しています。
特に、1990年代初期のオルタナティブ・ロック系のバンドはジャズマスター使用率が高いです。一説によると、ギターショップで中古ギターの価格が安かったからだと言います。
ギタリスト一覧(邦楽)
- INORAN(LUNA SEA)
- 田渕ひさ子(NUMBER GIRL、bloodthirsty butchers)
- ヤマジカズヒデ(dip)
- の子(神聖かまってちゃん)
- 沙田瑞紀(ねごと)
- 椎名林檎
- 戸高賢史(ART-SCHOOL)
- 田中和将(GRAPEVINE)
- 中島真一(SEKAI NO OWARI)
- MAMI(SCANDAL)
- すぅ (Silent Siren)
- 川上洋平 ([Alexandros])
- 川谷絵音(indigo la End、ゲスの極み乙女。)
- 美濃隆章 (toe)
- 藤巻亮太(レミオロメン)
ギタリスト一覧(洋楽)
- ドン・ウィルソン(The Ventures)
- トム・ヴァーレイン(Television)
- サーストン・ムーア(Sonic Youth)
- エルヴィス・コステロ
- マイク・アインジガー(Incubas)
- スティーヴン・マルクマス(pavement)
- トム・ヨーク(Radiohead)
- J・マスキス(Dinosaur.Jr)
- ケヴィン・シールズ(my bloody valentine)
My Bloody Valentine『Loveless』と機材・音作り
ジャズマスターの音作り
ジャズマスターはFender系ギターの中では比較的Gibsonのようなサウンドが特徴です。音作りのポイントを紹介します。
ピックアップの特性
ジャズマスターのワイルドコイルピックアップは、P-90のようなきらびやかさと甘さを両立したサウンドです。 フロントピックアップでクリーントーンを弾いたときの音色はまるでジャズギター。Fender系のギターとは思えないツヤを感じさせます。 ただし、Gibsonレスポールよりもコードの粒ははっきりしています。リードプレイにも耐えうるFenderギターといった印象でしょうか。
エフェクターとの相性
ジャズマスターと相性がよいエフェクターですが、好みの側面も強いです。 ただ、あえておすすめのエフェクターを挙げるならいくつか候補を紹介します。
Fender Japanのほうがやや音は細いです。個人的にはMarshallアンプのクランチか、JC-120でオーバードライブのエフェクターを薄くかけることをおすすめします。
主観ですが80年代後半から90年頃のモダンなエフェクターとの相性がよいと感じます。トーンをコントロールして高音域が削れるエフェクターがベストです。
BOSS BD-2
BOSS BD-2(ブルースドライバー)とジャズマスターは相性抜群です。田渕ひさ子愛用エフェクターなので、この組み合わせの人も多いと思います。TONEを絞るのがおすすめです。
PROCO RAT
PROC RAT はジャズマスターと相性がよいディストーションです。フィルターをいじるとギラギラした暴力的なサウンドになりますが、ジャズマスターの高音が立ち過ぎないようにほどよく絞りましょう。
筆者の90年代オルタナティブ・ロック好きが色濃く反映されているので、ジャズマスターと相性がよいエフェクターはぜひ探してみてください。
シューゲイザーの音作りと必須のギター・エフェクター・機材【入門編】
ジャズマスターの改造
ジャズマスターは改造しないと弾きにくいと言われるほど、多くのプレイヤーが改造するギターです。欠点の多さが味ですが定番のカスタマイズを見てみましょう。
ブリッジの改造
イモネジのままだと弦落ちするため、ジャズマスターは弾きにくいというギタリストも多いはずです。弾きやすさをアップするために2つの選択肢が挙げられます。
ムスタングのブリッジへの改造
同じFenderのムスタングのブリッジサドルに換装する改造です。 純正のムスタングのサドルでは高さが調整できない欠点はありますが、弦落ちの問題が解消します。
ちなみに、トロイ・ヴァン・リューウェン(Quees of the Stone Age)のシグネイチャーモデルは、あらかじめムスタングのサドルに変更されています。
チューン・O・マティックへの改造
チューン・O・マティック(ナッシュビル)ブリッジに改造し、弦落ち対策するギタリストも少なくありません。 ジャズマスターと異なる規格のブリッジを搭載するため、ネジ穴を空け直すなどの大規模な施工になります。弦高調整が難しくなりますが、ガタつきや共振は起きにくいです。 なお、Fenderのクラシック・プレイヤのジャズマスターは、あらかじめチューン・O・マティックを搭載しています。
バズ・ストップ・バー
イモネジの弦落ちの原因は、弦のテンションが弱くてイモネジが落ちてしまうことでした。 弦のテンションをアップし、弦落ちや共振を防ぐアイテムがバズ・ストップ・バーです。大規模な改造を必要とせず、取り付けのみで弦落ち対策が完了します。
どの弦落ち対策にも言えますが、ジャズマスター本来のサウンドは微妙に変化します。
ピックアップの改造
ジャズマスターのピックアップ改造も定番のカスタマイズです。リプレイスメントピックアップの選択肢は少ないですが、ハムバッカーを載せてパンチを加える人は多数います。
セイモアダンカンの搭載
セイモアダンカンからはSJM-1~3までのピックアップが登場しています。
ピックアップの種類 |
サウンドの傾向 |
SJM-1 |
オリジナルと同様のサウンド |
SJM-2 |
オリジナルの出力をアップ |
SJM-3 |
低中域のパワーを強化 |
ジャズマスターのサウンド傾向を大きく壊すことなく、同時にジャズマスターのサウンドの質感を変化させます。
SJM-3を搭載していましたが、アンプを同じボリュームにセッティングしていても音量が変わります。パワー感が強くおすすめです。
ハムバッカーの搭載
ハムバッカーを搭載するとジャズマスターの改造の選択肢は広がります。 本来、シングルコイル・ピックアップの繊細さとハムバッカーの甘さを融合したサウンドがジャズマスターの特徴です。しかし、ハムバッカーを搭載することでヘヴィーなジャンルに耐えうるギターに変わります。 なお、実はジャズマスターのピックアップはハムバッカーのサイズと規格が異なります。ザグリ工事が必要な点のみ注意しましょう。
ジャズマスターの買取価格
ジャズマスターは一時期は不人気で製造中止になりました。しかし、オルタナティブ・ロックムーブメントで人気に火が付き、Fenderのカタログにラインナップされています。 当然、中古市場でも需要があるギターです。買取をご希望の方はぜひ楽器の買取屋さんまでお問い合わせください。
FenderだけでなくSquierモデルのジャズマスターも買取実績があります。詳しくは楽器の買取屋さんまでお問い合わせください。
【相場・査定例】Fender(フェンダー)ジャズマスターの買取価格!高額査定が期待できるフェンダー・ジャズマスターのモデル