ネック反りはその名の通り、本来まっすぐであるはずのギターのネックが反った状態を指します。
また、ネック反りを起こすと弦高が変わったり、弦がフレットに干渉してビビリ音が生じたりする原因となります。
そのため、ギターを演奏する際はネックの状態が重要です。
この記事では、ネック反りの原因や確認方法、自分でできる調整方法を紹介します。
ギターのネックを最適な状態に保ち、快適な演奏を可能にするためもぜひ参考にしてみてください。
この記事のポイント
ギターのネック反りの種類
ギターのネック反りは、「順反り」と「逆反り」という2つに分けられ、それぞれギターの演奏に異なる影響を与えます。ここではネック反りの種類を紹介します。
順反り
ギターのネックが弦の引っ張りによって前方に湾曲することを順反りと言います。
これはギターが正常に反応している証拠で、通常は問題視されません。しかし、反りが過度に進むと7〜12フレット付近で弦高が高くなり、演奏しにくく感じることがあります。
軽度な順反りであれば問題はありませんが、演奏に影響を与える場合は調整しましょう。
逆反り
逆反りはギターのネックが弦の引力に反して反対方向に湾曲する現象です。
ネックと弦の間隔が狭くなり、ローポジションで演奏する際にビビリ音が発生しやすくなります。
症状が進行すると開放弦でもフレットに弦が触れ、演奏に支障をきたすことがあります。このような状態は演奏に影響を与えるため、症状が悪化する前に調整しましょう。
ギターのネックが反ってしまう原因
ギターのネック反りはさまざまな要因によって発生します。適切に対策をするためにもそれぞれの原因について確認していきましょう。
弦の張力
ギターの弦は常にネックに一定の張力をかけており、これが原因でネックは自然と順反りになりやすくなります。
ネックの反りが気になる場合は、ギターを使用しない時に弦のテンションを緩めておきましょう。ネックへの負荷を減らしてネック反りの予防ができます。
湿度
ギターは木製であるため、湿度の変化に敏感です。
湿気が多すぎると木材が膨張し、反対に乾燥が進むと収縮します。これらの変化は、ネックの反りや変形を引き起こす主な原因の一つです。
特に湿度が50%を超える高湿環境や30%未満の乾燥環境は、ネックの反りが起きやすくなります。
そのため、適切な湿度管理はギターの健康を維持する上で非常に重要です。
たとえばエアコンや加湿器、ギターケースの中に入れる吸湿材は湿度の調整に役立ちます。
温度
温度は湿度と同様に、ギターのネックに影響を与える重要な要素です。
ギターの理想の温度は20~25℃で、この範囲を超える急な温度変化はネックに悪影響を及ぼす可能性があります。
特に日本は季節や地域によって気温が変わりやすいため、ギターの保管方法には注意が必要です。
直射日光はギターの温度が上がる原因となるため、室内での保管やケースを使うに心がけましょう。
その他外的な要因
ギターのネック反りは不適切な保管方法からも生じます。
たとえば長期間壁に立てかけて保管すると、ネックに不要な圧力がかかって反りの原因になります。
また、ソフトケースなど持ち運び用ケースを使う場合は、外部からの圧力がネックにかかる可能性も考えられるでしょう。
これらのリスクを避けるためは、専用のギタースタンドを利用することもおすすめです。
ギターのネック反りの確認方法
ギターのネックが沿っているかどうかが判断できれば、どのような調整が必要かが正しく判断できます。
ネックが順反りか逆反りかを判別するには、主に2つの確認方法があります。
それぞれの方法についてみていきましょう。
目視で確認する
ギターを平らな場所に置いて、ネックを直接目線の高さで見ることでネックが沿っているか確認できます。
その際にネックが水平でなく、一方向に曲がっているように見える場合は、ネックに反りがある可能性が高いでしょう。
ほかにもヘッド側だけでなく、横側やボディ側からもチェックすると分かりやすいでしょう。
フレットに指を置いて確認する
1フレットと最終フレットに指を同時に置き、その間の8~12フレットあたりの弦とフレットのすき間を見ることでもネック反りを確認することが可能です。
その際にフレットと弦の間に明確な隙間があれば、ネックが順反りになっている可能性が考えられます。
反対にほとんど隙間がなければ、逆反りの可能性が考えられるでしょう。
ギターのネック反りの直し方・調整方法
軽度のネック反りは、適切な工具と方法を用いれば自分で解消することが可能です。
ここでは自分でネック反りを直す方法を紹介します。
また、ネック反りを調整する際は事前に下記の道具を用意しておきましょう。
特にレンチはトラスロッドの形状によって必要なタイプが異なるため、調整前に確認しておくと安心です。
【ネック反りの解消に必要なもの】 ・定規(ネックの状態や弦高の確認に使用) ・ドライバー(カバーの取り外しや十字タイプのトラスロッドに使用) ・ボックストラスロッドレンチ(ナットタイプのトラスロッドに使用) ・6角レンチ(6角タイプのトラスロッドに使用) |
弦を外す
ギターの種類によってはトラスロッドを調整する前に弦を外す必要があります。
特にストラトキャスタータイプのギターは、ネックを取り外す必要があるため、先に全ての弦を外します。
一方、トラスロッドの調整箇所がヘッド側にあるギターの場合は、弦を外さずに調整が可能です。
ヘッドのカバーを外す・ネックを外す
トラスロッドの調整箇所がヘッド側にあるギターは、ヘッドに設置されたカバーを取り外すことで、そのまま調整用のナットにアクセスできます。
一方、ネックが取り外せるモデルは、ギターのボディ裏側にあるボルトを解除することでネックが取り外せます。
ネックを取り外すことで、根本部分に設置されているトラスロッドにもアクセスできるため、そこからネック調整を行いましょう。
トラスロッドを回す
ギターのネック調整には、ネックの先端や根本に位置するトラスロッドを専用の工具で回転させて行います。
その際にネックが順反りの場合は時計回り、逆反りの場合は反時計回りにレンチを回してください。
いずれも力の入れすぎや回しすぎに注意し、約30度から45度の範囲で少しずつ調整しましょう。
調整が完了したら、ギターの弦をチューニングしてネックの状態を再度確認します。
また、時間が経過するとネックの状態が変化することがあります。
数日後にもう一度状態を確認し、必要に応じて調整作業を繰り返してください。
難しければ専門店に修理の相談をすることも方法
自分でネック調整を行うことが難しい場合は、無理をせずに購入した楽器店や専門の修理店に相談しましょう。
失敗せずに正しい状態へネックを調整できます。
専門店であれば、クラシックギターやトラスロッドを搭載していない古いギターなど、特殊な状況でも対応できる場合があります。
自分で調整しても解消しなかった場合も解消できる場合があるため、気になる人は専門店へ相談してみることも方法です。
ギターのネック反りに関するよくある質問
最後にギターのネック反りに関するよくある質問とその回答を紹介します。
ネック反りが音に与える影響や修理料金の目安についてみていきましょう。
アコギやクラシックギターのネック反りを直す方法は?
アコースティックギターのネック反りは、エレキギターと同じようにトラスロッドの調整で修正可能です。
その際はトラスロッドの調整位置がヘッド部分ではなく、サウンドホール側に設置されている場合もあるため注意しましょう。
なお、クラシックギターの中にはトラスロッドを備えていないモデルもあります。
そのような場合は、フレットの調整やネックを加熱するなど、異なる手法でネック反りを修正する必要があります。
ネック反りの修理料金はいくらぐらい?
ネック反りの詳細な修理費用は楽器店によって差があります。
トラスロッドを使用した基本的な調整では、多くの場合2,000円から3,000円程度で対応可能です。
一方、ネックを取り外して調整が必要なケースやトラスロッド以外の方法での調整が必要なケースは、料金が上がる場合があります。
トラスロッドではなくネックアイロンを用いた調整は、工数が多く特殊な工具を用いることから、15,000円以上かかる場合もあるでしょう。
具体的な見積もりを希望する場合は、修理を依頼する前に楽器店へ問い合わせておくと安心です。
ネック反りが原因で音は変わる?
ネックの反りはギターの音質に重要な影響を及ぼします。
たとえば、順反りになるとギター全体がより共鳴しやすくなり、音に深みが増すと言われています。
一方、逆反りになると音色がシャープでタイトに感じるかもしれません。
しかし、反りが過度になると弦高が適切でなくなり、音程の正確性が失われやすくなります。
特に逆反りは、進行すると音の詰まりやビビり音の原因になるため注意しましょう。
まとめ
ギターのネック反りの原因と対策方法を紹介しました。
ネックの反りの原因が分かれば、適切な方法で調整しやすくなり、正しいネックの状態をキープしやすくなります。
また、自分で調整が難しいと感じた場合は専門店へ相談することも方法です。
ネック反りに悩んでいる方はぜひ今回の内容を参考にしてみてください。